あおげばとおとし
3月は、卒業の季節です。
卒業式には、本校では未だに「あおーげばーとおーとしーわがーしのーおんーー」と歌います。
担任としては、子どもの意識と違うかなあと思って、音楽の先生に色々聞かせて選んでって言ったんだけれど、
まあ伝統の重みで、子どもはこれを選びました。
で、卒業までの音楽の時間、六年の担任は指揮をしてこの歌を教えることになっています。
でも、どどうもはじめは照れてしまって、顔が笑ってしまってこまったね。
今日は、卒業式に指揮をする先生と変わってほっとした。
そのとき、卒業式本番の指揮者が言いました。
「どうも、【今こそ別れめー、いざさらあばあ】の【い】の音が伴奏と歌と指揮と合わない。」
この曲は指揮がたいへん難しいんです。六拍子だから。
「あのね、指揮っていうのは合図なんだ。いきなり歌えって振ってもだめ。二拍くらい前から、
【さあ息だよ、この早さだよ。】って知らせるように振るんだよ。」
「振ってみるね。」・・・「あわないな」
「今こそーわかれめーーーー(はい)いざー、って振る。この【はい】のタイミングを取ってみたらどう。」
「もう一度、振るね。」・・・「まだ合わないね」
「僕が振ってみようか。」
すると、ピアノの先生が、
「クマ先生、本番のときも振ったら。」
冗談じゃない、明日は、入場の引率、進行、証書渡しの手伝い、涙も流すかもしれないから忙しいんだ。
「あのね、【はい】の早さと【い】の早さを変えちゃだめ。先生はなんだか、【い】になると振るのが早くなるよ。」
なんて、特訓もします。小学校の先生は音楽もやる。指揮っていうのは簡単そうで、本当は難しい。
「ところでね、もっというと、【あ お お げ ば あ と お お と し い】って指揮しない方がいいよ。
三拍子に歌うとほんとに小学校の音楽みたいだよ。二拍子に歌う。【あ おーげ ばーと おーと しーわ】ってすると
卒業式の歌みたいにしんみりとなる。」
「うーん、つい、拍を切りたくなるけど、切らないように、大きく円を書く振り子のように、そう、一番下を早くして」
今夜は特訓、明日が楽しみ。
あ、私の専門は理科です。それにしちゃ、算数のアプレットばっかりだね。
--------- 後日談 ------------------
その日は家に帰って鏡の前で練習したとか。
卒業式の前日は、頭の中を「仰げば尊し」が回っていて寝られなかったとか。
当日朝には、ピアノと合わせたけど「まだ違う。」ってピアノの先生に言われたとか。
でも、卒業式には、子どもと指揮がぴったり合ってすばらしい式になりました。