ものの膨張(ぼうちょう)と事故(じこ)
ある冬の掃除の時間です。(1998年)教頭先生がプールの横を掃除している子どもたちに
「これ、こわれているけど、いつからこわれているか、しらない?」
と、聞きました。
プールの横には、今年行われた、プールの水の排水用の塩化ビニール管がむき出しになっています。塩ビ管の太さは10センチ以上あります。 プールから何本もの太い排水パイプが出ており、それを受けるように塩ビ管が走っているのです。プールの横に走っている塩ビ管は、2mに1カ所くらいプールサイドのコンクリートに鉄の輪で固定してあります。
分かりやすいように、図で書いてみましょう。
◆◆図と解説◆◆
その塩ビ管の端の方が折れて、落ちているのです。今年のプールの終了後行われた工事ですから、9月頃の工事です。それが11月にはこわれていたんですから、そんなに早く壊れてしまったのでは困ったものだと、教頭先生は思ったのです。教育委員会に報告しなければならないのですが、それでは「もう壊してしまったのか、管理はどうなっているのだ。」と言われそうな気もしたのでしょう。
子どもたちは、口々に
「知らない。」
「気がつかなかった。」
「そういえば、保育園の子どもたちがきのう遊んでいたよ。」
「上を歩いていたよ。たぶん。」
と答えたのでした。
きっと、誰かが上に上ってゆすったんじゃないだろうか。それで折れたのだろうと考えたのです。
でも、一番疑わしいのは、そこで掃除を行っていた子どもたちです。子どもたちは早速、探偵をはじめました。まず、疑うのは「ここで遊んでいたのは誰だろう」ということです。でも、タロウ君は言いました。「まず、探偵は現場を調べることから始まる。現場をよく見てみよう。」タロウ君は、大きくなったら家業のブタ屋(ブタの養殖をしています)をしながら、探偵になりたいという探偵小説大好き少年だったのです。
早速、みんなで現場調査です。まず、落ちていた塩ビのパイプの強さしらべです。一番小さなカズオ君がまずおそるおそる上ってみました。でも、割れません。上ではねてみましたが、それでも割れません。保育園の子どもたちが歩いても壊れそうもありません。思い切って、一番大きい、ミチアキ君が上にのぼってはねました。でもこわれません。みんなで交互に上に上ったけれど、簡単に壊れるようなものではなかったのです。
そこで、タロウ君は、次は塩ビ管のつながる先を見てみました。塩ビ管の先はきれいに割れています。その先はどうだろうと、タロウ君は塩ビ管の上をおそるおそる歩き出しました。割れないだろうと思ってはいたのですが、ちょっと心配です。歩いていって気がつきました。壊れているのは端だけではない、ところどころ割れている。
そこで、はっと気がついたのです。これは、誰かが乗って壊れたのではないんだ。
理科で習った、膨張と収縮が原因なんだ。コンクリートと塩ビ管が・・・・・
◆◆図と解説◆◆